賃金制度(年俸制導入)改革についてポイント

1.年俸制とは
 賃金形態の一つ。賃金形態とは、賃金の支払形態を意味し、時給、日給、月給など基本給がどのような計算単位(時間単位か、生産量単位か)で定められているかの類型区分のことをいいます。したがって年俸制への移行は、月計算単位から年計算単位に変えることを意味します。ただし、労基法の定めによって、実際の支払いは年払いでなく月払いとなります。

<一般的例月給与の賃金構成>
固定的賃金・・・基本給
        ・・・固定的手当(家族手当、住宅手当etc
変動的賃金・・・変動的手当(時間外手当etc

<年俸制の事例(2段階方式の場合)>


業績年俸など
変動的(評価に基づきレンジレートで変動)
役割年俸又は
基本年俸など
固定的(資格等級毎シングルレート)

  
2.年俸制の大きな特徴
 荒い替え方式となります。通常年1回、前年賃金額とは関係なく、前年の評価に基づき次年度の賃金額を決定します。
そのため降給も発生します。したがって一般的には次のような配慮をしなければなりません。
 (1)荒い替え方式は、業績年俸のみとし、役割年俸は資格等級ごとに固定化。
 (2)賃金額の低い層は、降給によって生活に影響が大きいので適用対象外。

3.設計の事前確認
 (1)現行設計内容(賃金制度は他人事諸制度と密接に関連があるため確認しておく必要があります)
   @等級制度の内容
     職位職階制、職能資格制度など。もし職能資格制度なら資格等級区分・資格基準・役職位対応ルールなどの内容。
   A評価制度の内容
     考課制度、目標管理制度、コンピテンシー評価、面接制度、自己申告制度など。
     考課制度があるのなら、考課項目・考課要素・考課ルール・賃金リング・時期など。
   B賃金制度の内容
     基本給体系(職能給・本人給・業績給など)、その他各種手当などの内容と支払方法、賞与算定方式、退職金算定方式など
 
 (2)改革の方針
  @改革基本コンセプト(経営方針、人事政策etc
  A改革要望内容
  B改革対象範囲 

 (3)新制度開始希望時期と改革予算
  新制度開始日を目標に改革に着手します。期間があまりないときは改革内容を限定して実施します)
  予算は、@コンサルタント料とA原資増加許容予算です。

4.人事制度設計の設計範囲
 人事諸制度間の整合性を確保するため、次の各制度をワンセットで行ったほうがよいです。
 予算が限られている場合には、数年にわたって段階的に改革を進めていくのも方法です。

  @等級制度設計(資格等級体系・等級基準書などの設計)
  A評価制度設計(人事考課・目標管理・面接・自己申告などの設計と運用ルール)
  B賃金制度設計(基本給体系、諸手当、賞与、退職金の設計と運用ルール)

5.手順・スケジュール
   @事前調査によって改革基本コンセプト・改革範囲など確認
   
   A設計及び提案書作成のための基礎資料の受領
   
   Bヒアリングによる課題の抽出

   
   C設計企画書・設計日程・見積書・契約書などの提出 
   
   D本設計(4−@ ⇒ 4−A ⇒ 4−B の設計)
   
   E改革報告書提出・プレゼンテーション
   
   F導入説明会

6.設計及び提案書作成のため受領する基礎資料の内容
 (1)経営理念、経営ビジョン、社是、社訓、行動指針、求められる社員像など
 (2)経営計画・事業計画(2003年〜2004年単年度計画、中・長期計画など)
 (3)業績管理データ(過去2年分程度の業績管理データ)
   @全社の損益計算書及び明細(販売管理費の内訳など)
   A事業別・部門別などの売上、利益(粗利益、営業利益、貢献利益)、販管費(人件費、経費)、受注などの業績データ
 (4)規程類 
   @就業規則
   A人事諸規程(職能資格体系、昇格・昇進、評価など)
   B賃金諸規程(給与、賞与など)
   Cその他関連規程(教育、退職金など)

 (5)人事制度関連資料
   @人事制度概要(全体がわかるもの)
   A賃金制度(賃金テーブル含む)
   B評価制度(評価基準、評価マニュアル)
   C処遇制度(昇格、昇進、異動のルール等)
   D教育研修制度(教育・研修体系、キャリアパス等)
   E表彰制度

   Fその他(社員説明会資料、現状制度導入時の調査・分析資料など)